加藤博『アブー・スィネータ村の醜聞』(ISBN:4423460440)

19世紀半ばの裁判文書にあるある村の村長職をめぐる争いを研究していた著者が、その村を実際に訪ねてみると、その事件が現代まで記憶され村に影響を残していることが判明するという、非常にスリリングな研究です。
文書研究が現地でどのように展開していったかと、歴史学研究者としてフィールドに出るときの著者の迷い・葛藤などが書かれていて、なんというか非常に面白く読めました。文書による研究とフィールド研究のつきあわせをいかに行うべきか、という点に対しても示唆するところが多くあります。僕にこんな状況が訪れることはないでしょうが、一度は出会ってみたいシチュエーションではあります。