2008-01-01から1年間の記事一覧

W.A.ピアズリー『新約聖書と文学批評』(ヨルダン社、1983年[原著は1970年])

イエスに関する史的知識を支える堅固な基盤の追求は、共観福音書――マタイ、マルコ、ルカ各福音書――相互の文学的関係(literary interrelationship)の研究をもたらした。それらは、十九世紀に理解されたところによれば、史的記録として最も見込みのありそう…

不覚

必要があってこの前出た自分の論文をちょっと見たら誤訳を発見してしまいました・・・かなり憂鬱。まあ論旨に直接影響するような誤訳ではなくて、単に時制を上手く訳せていないだけなんですが、有名なテクストなのでかなり恥ずかしいです。やれやれ。

宗教ではよくあること

キリストびっくり?聖墳墓教会で聖職者乱闘 エルサレム(asahi.com) キリストが十字架にかけられ処刑された跡に建てられたといわれるエルサレム旧市街の聖墳墓教会で9日、20人以上の聖職者同士の殴り合いが起き、数人が顔などから血を流すけがをした。イ…

G・タイセン著、大貫隆訳『新約聖書:歴史・文学・宗教』(教文館、2003年、原著は2002年)

そこでわれわれは、史的イエスを再構築するに当たり、二つの基準に従う。 (1)まず、影響の妥当性の規準に照らすと、他の要因によって説明するよりも、史的イエスからの影響として説明する方がうまくゆくものが真正である。この規準に従うと、とりわけ互い…

論文の書き方にかかる悩ましさ

博士課程に何年もいてこういうことをいうのは恥ずかしいが、どうも僕が論文と思って「自然に」書いたものは、歴史学世間一般においては論文とは見なされないようだ。内容というよりも構成の問題ということなのだが。指摘されていることはよくわかるのだが、…

ヒューム『市民の国について(上)』(岩波文庫・青619-5、1952年)

現在を非難し、過去を讃歎する気質は、人間性の中にしっかりと根を下ろしており、そのため、最も透徹した判断力と最も該博な学識とをもったひとびとにさえ、影響を及ぼすものなのです。 (「古代人口論」p.125) 古代の人口が後の時代の人口に比べて過度に大…

野家啓一『物語の哲学』(岩波現代文庫・学術139、2005)

「物語」と「歴史」に関していろいろ示唆に富む本なのだが。 ノートの上に一本の線分を水平に描いてみよう。それを時間軸と見なすことは、物理学の初歩を学んだわれわれにとっては、きわめて自然な発想である。話を歴史的時間に限るならば、線分上の各点にさ…

参照可能性の増大

今現在あらゆる資料のデジタルアーカイヴ化が進んでいて、文字の発明とか紙の普及とか印刷術の普及とかに近いインパクトがあると思うのだが、学問(とりわけ人文系の)にとって参照可能性の増大がどんな影響を持つかについての研究があれば読んでおきたい。 …

仲正昌樹『お金に「正しさ」はあるのか』(ちくま新書500、2004年)

これは面白い本でした。そもそも貨幣について考えるに際してまず自らに関わる「大学や研究者と貨幣」というところから説き起こす点が誠実な感じを醸し出して好感が持てる。 話は多岐にわたるものの、筋としてはだいたい納得できる。ただし、仕方のないことで…

小田亮『レヴィ=ストロース入門』(ちくま新書265、2000年)

著者がレヴィ=ストロースのことが大好きだということがよくわかる本。そして僕が「構造主義」というものにこれまでかなりの不信感を抱いていた原因は多分レヴィ=ストロースなんだろうなあ、ということがなんとなくわかったような、わからないような。少な…

高田明典『世界をよくする現代思想入門』(ちくま新書577、2006年)

個人的には世界をよくする気はさらさらないが、「現代思想」の見取り図として購入。特に巻末のブックガイドは、人物ごとに「入門本」「原典」「さらに深める研究」という風に挙げられていて極めて重宝する。 でも現代思想というようなものを考えていた人たち…

「科学」としての歴史学

「科学」としての歴史学、というものを考えると、 ある基準以上に信頼できると考えられるデータ群に適合するモデルを構築すること あたりに落ち着くのではないだろうか(歴史学だけではないが)。 もうひとつ データレベルでの再現可能性(検証可能性) も必…

二宮宏之「歴史の作法」『歴史を問う 4:歴史はいかに書かれるか』(岩波書店、2004)、pp. 1-57.

最近博論の序論で方法論的なことを書くために歴史学論とかテクスト論とか史料論とか、その辺のものをしょぼしょぼと読んでいるのですが、これはなかなか良かったです。とりわけ目新しいことが書かれているわけではなく、史学概論で語られるようなことではあ…

日本

また微妙にどうでも良いことですが備忘的に。 漢語大詞典には「日本」という項目がない この前何気なく気付いて結構吃驚しました。いや、もしかしたら見方が悪いのかもしれませんが、少なくとも見つかりませんでした。某先生曰く「『漢語』ではないからでは…

小杉泰、林佳世子、東長靖編『イスラーム世界研究マニュアル』(名古屋大学出版会、2008)

まだ購入していませんが店頭で見たところなかなか予想以上にしっかりしたものだという感想です。順当に三浦徹、黒木英充、東長靖編『イスラーム研究ハンドブック』(栄光教育文化研究所、1995)に代わる研究入門になるでしょう。 購入したらもう少し詳しい感…

どうでもいいエントリが続きますが

ランボー3/怒りのアフワン という誰にも理解されないだろうダジャレを思いついてしまいました。しかしどこかに残しておきたいと思うくらいには気に入っています。なんだかなあ。

驚愕

「理由ある太郎」に某八尾師先生が出演しておりました。思わず叫んでしまいました。ちなみに「なんとかスタン」という国が多い理由の説明VTRでした。まあ20秒ほどでしたが。

研究のためのメモ

・初期イスラーム時代におけるイスティスカー ・イスラーム世界における貨幣破砕の禁止

本山美彦『金融権力――グローバル経済とリスク・ビジネス』(岩波新書・新赤1123、2008年)

読了。現代の金融/投資構造を痛烈に批判した本。この本一冊ではどこまで信用できるかはわからないが、非常に腑に落ちる内容であったことは確か。 もともとはサブプライム・ローンの問題がどういう話なのか、を知りたかったので読んでみたのだが、それ以上に…

ホメロス『イリアス(上)』(岩波文庫・赤102-1、1992年)

とりあえず上巻を読了。実は最初の目的は『ユリシーズ』を読むことだったのだが、それがパロディしている『オデュッセイア』を読もうと思ったのだが、それが『イリアス』の後日談的要素があることを知って、まずこれを読まねば、と。まあ欧米知識人の基本教…

不思議な話

サウジ大使館:「留学生の代わりに献血して」と呼びかけ(毎日jp) 「『世界献血デー』(14日)に、すべての自国民が滞在国で献血をするように」とのサウジアラビア政府の指示に従い、在日本サウジアラビア大使館(東京都港区六本木1)が留学生たちに献血…

アラビア語

今日、用事があってエジプトに電話をかけて、久々にアラビア語でしゃべったのですが、単語が出てこない、出てこない。もともとそんなに流暢には話せませんが、単語を思い出せずにヤアニ、ヤアニばかり言ってました。語感的には「つまり」とかそんな感じなの…

スティーブン・ピンカー『言語を生み出す本能(上)』(NHKブックス740、1995)

ずっと前から読もうと思っていてなかなか読んでいなかったもの。人間の使う言語について比較的体系的に書かれている。かなり自分が思い込んでいた「常識」を覆すような話があって面白い(典型的なところでは「言語が思考を規定する説は誤り」「話し言葉の音…

西尾哲夫『アラビアンナイト――文明のはざまに生まれた物語』(岩波新書赤1071、2007年)

単純な「オリエンタリズム」論を超えた視点から「アラビアンナイト」という文化現象の生成、展開を解説した本。アラビアンナイトほどの有名な本について、ここまでよくわかっていないとは知らなかったこともあり、かなり新鮮で面白く読めた。 個人的には日本…

どうでもいいことなのですが

大学の事務に事務的な用件でメールを送ったら、波線やエクスクラメーションマーク、果ては「(^_^;)」とか「」とかの顔文字が使われた物凄くフレンドリーな返信が返ってきました。いや、別に、いいんですけど、いいんですけど、知り合いだというわけでもない…

中村修也『偽りの大化改新』(講談社現代新書1843、2006年)

日本書紀を批判的に読み直すことによって、「大化の改新」前後の大和朝廷の状況を再構築しようという試み。基本的には大化の改新は中大兄王子ではなく軽王子(「改新」後に即位した孝徳天皇)の主導によるものであったという話。 大枠は比較的納得できる内容…

武光誠『邪馬台国と大和朝廷』(平凡社新書224、2004)

前半は文献史料による邪馬台国研究史の流れを解説し、後半で考古学的な発見を紹介、その上で著者の邪馬台国像を描くという構成。 正直なところ『鹿男あをによし』を見て今の研究はどんなもんだろうという興味で手に取ったのだが、著者は邪馬台国九州説だった…

青木健『ゾロアスター教』(講談社選書メチエ、2008年)

ゾロアスター教を中心にイラン系の宗教を紹介した本。ゾロアスター教については知らなければいけないと思いつつ、あまりしっかりした本は読んでいなかったので、勉強になる部分が多かった。 ただ、僕の知識不足が理由かもしれないが、事実関係がいまいちわか…

ゲルト・アルホルフ著、柳井尚子訳『中世人と権力--「国家なき時代」のルールと駆け引き』(八坂書房、2004年)

中世ヨーロッパの支配層の中でどのような形で問題解決が行われていたかを実例をふんだんに見ながら紹介/分析した本。原著は1998年。 プロローグより。 中世における支配権の特徴を理解することは、近・現代の支配形態との違いを意識することでもある。この…

まいった・・・

今日発見して驚愕、そして困惑したのですが、僕が昨年末に投稿した論文と似たような方法論・テーマで「トンデモ」的な結論を導こうとしている方がドイツにいらっしゃるようで。2006年刊の論文集ですが、これまで本の名前も筆者の名前も見たことがなかったの…