武光誠『邪馬台国と大和朝廷』(平凡社新書224、2004)

前半は文献史料による邪馬台国研究史の流れを解説し、後半で考古学的な発見を紹介、その上で著者の邪馬台国像を描くという構成。
正直なところ『鹿男あをによし』を見て今の研究はどんなもんだろうという興味で手に取ったのだが、著者は邪馬台国九州説だったというオチ。まあこれまでの学説が比較的良く紹介されているので、鹿男がどのあたりをもとにしてできた作品なのかというのはよくわかった。また、邪馬台国が九州にあったか大和にあったかで日本の古代史像が完全に異なってくる、という話は面白かった。
正直なところ、考古史料と文献史料をどのようにしてつきあわせていくかという手法、というかその基準が最もセンシティヴな問題だと思うのだが、確固たる一貫性が感じられない部分も少なくなかった。ただ、自分の研究もこういうふうに見えるかもしれないことを考えると、いろいろと苦しくなってくるのであるが。