まいった・・・

今日発見して驚愕、そして困惑したのですが、僕が昨年末に投稿した論文と似たような方法論・テーマで「トンデモ」的な結論を導こうとしている方がドイツにいらっしゃるようで。2006年刊の論文集ですが、これまで本の名前も筆者の名前も見たことがなかったのは、僕の不勉強もあるでしょうが、やはり学界から無視されていたからなんでしょうか・・・。学術雑誌の書評らしきものは見当たらず、新聞なんかの評がグーグルにヒットしたことで発見できました。単にまだ新しいから評が出ていないだけかもしれませんけども。
とりあえず実物を見てみないとなんとも言えないのでとりあえず注文してみました。まあグーグルブックスでサンプルページを見た限りでは、使ってる史料はだだかぶりでキータームも同じっぽいので、正直激しく動揺しております。僕の論文も、自分としてはかなりエクスキュースを入れてマイルドにしたつもりなんですが、トンデモ扱いされる可能性は十分あるので、二重にまいった感があります。
今度出るであろう僕の論文は、碑文とか貨幣とかに刻まれた文章を手がかりに、後代(どれだけ早く見積もっても百年後)に編纂された文献史料から構築されてきたカリフ像の修正を試みる、というものなのですが、別に僕は文献史料はまったく信頼できないと言っているわけではなくて、むしろ文献史料がどの程度信頼できるかを知るために、碑文史料とか貨幣史料を使って相対化している部分が結構あります。
ただまあ、日本でも時代をさかのぼって「おおきみ」が「天皇」に言い換えられたような例がありますし、初期イスラーム世界の歴史叙述がいわゆる「官撰」でなかったことを踏まえても、そういうことは十分あり得ると思いますし、カリフの称号については碑文史料とか貨幣史料の方がより適した史料であるとは思っていますが。
博論は史料横断的な話をしようと思っていますが、それぞれの史料類型の専門家の方もいらっしゃるので、苦しい限りです。やれやれ。