津野香奈美『パワハラ上司を科学する』(ちくま新書1705、2023年)

 今日店頭で見かけて買ってサクッと読了。理路整然と書かれていたので読みやすかった。
 僕は仕事柄パワハラをしていないかいつもドキドキしながら過ごしているので、定期的にこれ関係のものは買って読むようにしている。
 このへんの知見がちゃんと普及して初めて、というところなのだが、とはいえここで書かれているような理念状の管理職をしっかり勤め上げられる人が人間の何割くらいいるのか、とは思う(常に完璧である必要はないが、とはいえ完璧でなくなったタイミングに当たった部下は「運が悪かった」では片付けられない気もする)。
 管理職が上役ではなく単なる専門職の一つになればある程度解決すると思うけど、日本の組織構造でやるのは相当時間かかるだろうとも。

 しかし、「あなたは存在しているだけで素晴らしい」という教育やメッセージが繰り返された結果起こったのは、期待されていた成績向上や犯罪率の低下ではなく、むしろ「負の効果」でした。高い自尊心、その中でもナルシシズムは、プライドを傷つけられたことへの報復として他者を攻撃すること、そして自尊心の高い人は、低い人と比べて内集団(自分が所属する集団)を優遇する傾向にあり、それが差別や偏見を助長させる可能性があることが示されたのです。(pp. 137-138)

 まあそうだろうなというところですが、自尊心が低ければいいというものでもないのが厄介なところで。