西尾哲夫『アラビアンナイト――文明のはざまに生まれた物語』(岩波新書赤1071、2007年)

単純な「オリエンタリズム」論を超えた視点から「アラビアンナイト」という文化現象の生成、展開を解説した本。アラビアンナイトほどの有名な本について、ここまでよくわかっていないとは知らなかったこともあり、かなり新鮮で面白く読めた。
個人的には日本でのアラビアンナイト像を語る際には、その影響力を考えて『ドラえもん のび太ドラビアンナイト』にも触れてほしくはあった。
また、終章である「『オリエンタリズム』を超えて」では、

オリエンタリズムとは文化的他者認識の普遍的メカニズムに還元できるという立場から、オリエンタリズムアラビアンナイトの関係を簡単にまとめてみよう。以下の論では、文学的営みとは、他者を認識し自己との関係をテキスト化する虚構の空間である、と見なして、他者を物語化するパターンを五つの段階に分類する。(p.200)

とあって、これ以降その五段階を紹介し、それにアラビアンナイトの各段階を当てはめていくのだが、この五段階分類が著者独自のものなのか、それとも誰かの理論を援用したものなのかがあまりよくわからなかった(書き方からいうと著者独自のもののように読める)。これについてもう少ししっかりと書かれたものを読みたいところだ。同じ著者の『アラブ・イスラム社会の異人論』(世界思想社 、2006年)もいずれ読むことになるだろう。