文献

オンラインでアラビア語写本を見ることができるサイト

デジタルイメージコレクション Princeton Digital Library of Islamic Manuscripts http://library.princeton.edu/projects/islamic/index.htmlIslamic manuscripts at the Leipzig University Library http://www.islamic-manuscripts.net/content/below/in…

人文系新刊書紹介サイト

人文書(専門書の新刊書のご案内)もしかしたら超有名サイトなのかもしれないのですが、まったく知らなかったのでご紹介。人文系の新刊をかなり詳しく紹介しているサイトです。新刊紹介はジャンル分けされていてみやすいですし、朝日・読売・日経の書評にど…

五十嵐修『地上の夢 キリスト教帝国:カール大帝の<ヨーロッパ>』(講談社選書メチエ224、2001)

少し前にフランク帝国を研究している人にあったこともあり、自分の研究している時代と比較的近いということに気付いて読んでみました。 カール大帝が多くの場面でキリスト教的な意義付けによって行動していたと描かれているんですが、あまりそういうイメージ…

ジェフリー・パーカー『長篠合戦の世界史―ヨーロッパ軍事革命の衝撃1500~1800年』(同文舘出版、1995年、原著は1988年)

読了。近世ヨーロッパにおいて軍事技術がどのような道をたどって革新されたか、ひいては近代に他地域を圧倒することになった軍事力の背景がどのようにして形成されたかを描いた一冊。この方面にはやや疎いこともあり、かなり新鮮に読めた。 なによりも、銃や…

ロイ・ポーター著、見市雅俊訳『啓蒙主義』(岩波書店、ヨーロッパ史入門、2004)

原著は2001年。"Enlightment"(=啓蒙)と呼ばれる営為を担ったPhilosophesと自称する人々についての研究を整理し、紹介したもの。 第七章における「運動か、それとも心性か」という問いの立て方には考えさせられた。筆者が最近考えている初期イスラーム時代…

ウィリアム・ドイル著、福井憲彦訳『アンシャン・レジーム』(岩波書店、ヨーロッパ史入門、2004)

原著は2001年。フランス革命の前段階に存在したとされる「旧体制」がいかなるものであったか、いかなるものとして考えられてきたか、ということに関する研究をまとめてわかりやすく整理したもの。 同じ対象が、それぞれの時代背景、思想背景、研究視角などに…

アラン・ソーカル&ジャン・ブリクモン『「知」の欺瞞:ポストモダン思想における科学の濫用』(岩波書店、2000)

読了。読んで良かったと思える一冊でした。数学や物理学の概念がいかに「ポストモダン」思想の中で、意味のない形で使われているかを例示したもので、主に取り上げられているのは、ラカン、クリステヴァ、イリガライ、ラトゥール、ボードリヤール、ドゥルー…

倉西裕子『「記紀」はいかにして成立したか』(講談社選書メチエ301、2004)

読了。日本書紀と古事記の成立/編纂過程を、紀伝体/天と地という観点から考察したもの。ある時期において天皇は祭祀を司るもので、皇太子は単純な世継ぎではなく「治天下の権」を持つ、すなわち実際的な政務を取り仕切るものであったという仮説はなかなか…

浜田寿美男『取調室の心理学』(平凡社新書226、2004)

読了。上の本と同じ著者。自白だけでなく、証言の記憶の変容や、知的障害を持つ人に対する取調官の誘導などの事例を挙げている。実は読み始めたのはこちらが先で、もともと研究に関わる関心から記憶関係の本を見ていたところで見つけた一冊。 これを読んで最…

浜田寿美男『自白の心理学』(岩波新書新赤721、2001)

読了。無実の罪でとらわれた人たちが、いかにして虚偽の自白を行うに至るかを描いた一冊。自白調書を心理学的な観点から読み込むことによって、「自白の変遷」や「無知の暴露」を手がかりに冤罪を晴らそうという試みが記されている。 こいつが犯人にちがいな…

ウラジミール・プロップ『昔話の形態学』(白馬書房、1987年、原著1928年)

有名ですが。ロシアの「魔法昔話」をその物語中に存在する機能によって分解・整理すると、すべての話のひな形となる構造が見出される、という研究。レヴィ・ストロースが取り上げたために有名になった、という話も有名。現代から見て批判はあるにしても、非…

Jacob Lassner, The Middle East Rememberd: Forged Identities, Competing Narratives, Contested Spaces, The University of Michigan Press, 2000

Chapter 1 - Reckoning Time, Recording History: The Formation of Historical Consciousness in the Medieval Near East A - Ta'rikh: From Reckoning Time to History and Histriography B - Historical Time, Historical Consciousness C - Muslim Histo…

伊藤正敏『寺社勢力の中世 ―無縁・有縁・移民』(ちくま新書734、2008年)

一般的な日本の中世像に大幅な修正を迫る一冊。編纂者による編纂を経たナラティヴ史料ではなく、文書や日記というより生の史料を用いて、無縁所としての寺社の実態を描き、その様相こそが中世を中世たらしめているものであると喝破する。 語り口がやや強めな…

小松久男『イブラヒム、日本への旅』(刀水書房、2008年)

1857年に西シベリアで生まれたトルコ系のムスリム、イブラーヒームの生涯と彼の旅を描いた一冊。汎イスラーム主義の立場から、ヨーロッパの帝国主義を批判し、「イスラームの統一」やイスラームの旗のもとでのアジアの連帯を唱え続けた人物の一代記になって…

仲正昌樹『お金に「正しさ」はあるのか』(ちくま新書500、2004年)

これは面白い本でした。そもそも貨幣について考えるに際してまず自らに関わる「大学や研究者と貨幣」というところから説き起こす点が誠実な感じを醸し出して好感が持てる。 話は多岐にわたるものの、筋としてはだいたい納得できる。ただし、仕方のないことで…

小田亮『レヴィ=ストロース入門』(ちくま新書265、2000年)

著者がレヴィ=ストロースのことが大好きだということがよくわかる本。そして僕が「構造主義」というものにこれまでかなりの不信感を抱いていた原因は多分レヴィ=ストロースなんだろうなあ、ということがなんとなくわかったような、わからないような。少な…

高田明典『世界をよくする現代思想入門』(ちくま新書577、2006年)

個人的には世界をよくする気はさらさらないが、「現代思想」の見取り図として購入。特に巻末のブックガイドは、人物ごとに「入門本」「原典」「さらに深める研究」という風に挙げられていて極めて重宝する。 でも現代思想というようなものを考えていた人たち…

二宮宏之「歴史の作法」『歴史を問う 4:歴史はいかに書かれるか』(岩波書店、2004)、pp. 1-57.

最近博論の序論で方法論的なことを書くために歴史学論とかテクスト論とか史料論とか、その辺のものをしょぼしょぼと読んでいるのですが、これはなかなか良かったです。とりわけ目新しいことが書かれているわけではなく、史学概論で語られるようなことではあ…

小杉泰、林佳世子、東長靖編『イスラーム世界研究マニュアル』(名古屋大学出版会、2008)

まだ購入していませんが店頭で見たところなかなか予想以上にしっかりしたものだという感想です。順当に三浦徹、黒木英充、東長靖編『イスラーム研究ハンドブック』(栄光教育文化研究所、1995)に代わる研究入門になるでしょう。 購入したらもう少し詳しい感…

本山美彦『金融権力――グローバル経済とリスク・ビジネス』(岩波新書・新赤1123、2008年)

読了。現代の金融/投資構造を痛烈に批判した本。この本一冊ではどこまで信用できるかはわからないが、非常に腑に落ちる内容であったことは確か。 もともとはサブプライム・ローンの問題がどういう話なのか、を知りたかったので読んでみたのだが、それ以上に…

ホメロス『イリアス(上)』(岩波文庫・赤102-1、1992年)

とりあえず上巻を読了。実は最初の目的は『ユリシーズ』を読むことだったのだが、それがパロディしている『オデュッセイア』を読もうと思ったのだが、それが『イリアス』の後日談的要素があることを知って、まずこれを読まねば、と。まあ欧米知識人の基本教…

スティーブン・ピンカー『言語を生み出す本能(上)』(NHKブックス740、1995)

ずっと前から読もうと思っていてなかなか読んでいなかったもの。人間の使う言語について比較的体系的に書かれている。かなり自分が思い込んでいた「常識」を覆すような話があって面白い(典型的なところでは「言語が思考を規定する説は誤り」「話し言葉の音…

西尾哲夫『アラビアンナイト――文明のはざまに生まれた物語』(岩波新書赤1071、2007年)

単純な「オリエンタリズム」論を超えた視点から「アラビアンナイト」という文化現象の生成、展開を解説した本。アラビアンナイトほどの有名な本について、ここまでよくわかっていないとは知らなかったこともあり、かなり新鮮で面白く読めた。 個人的には日本…

中村修也『偽りの大化改新』(講談社現代新書1843、2006年)

日本書紀を批判的に読み直すことによって、「大化の改新」前後の大和朝廷の状況を再構築しようという試み。基本的には大化の改新は中大兄王子ではなく軽王子(「改新」後に即位した孝徳天皇)の主導によるものであったという話。 大枠は比較的納得できる内容…

武光誠『邪馬台国と大和朝廷』(平凡社新書224、2004)

前半は文献史料による邪馬台国研究史の流れを解説し、後半で考古学的な発見を紹介、その上で著者の邪馬台国像を描くという構成。 正直なところ『鹿男あをによし』を見て今の研究はどんなもんだろうという興味で手に取ったのだが、著者は邪馬台国九州説だった…

青木健『ゾロアスター教』(講談社選書メチエ、2008年)

ゾロアスター教を中心にイラン系の宗教を紹介した本。ゾロアスター教については知らなければいけないと思いつつ、あまりしっかりした本は読んでいなかったので、勉強になる部分が多かった。 ただ、僕の知識不足が理由かもしれないが、事実関係がいまいちわか…

ゲルト・アルホルフ著、柳井尚子訳『中世人と権力--「国家なき時代」のルールと駆け引き』(八坂書房、2004年)

中世ヨーロッパの支配層の中でどのような形で問題解決が行われていたかを実例をふんだんに見ながら紹介/分析した本。原著は1998年。 プロローグより。 中世における支配権の特徴を理解することは、近・現代の支配形態との違いを意識することでもある。この…

町田健『ソシュールと言語学――コトバはなぜ通じるのか』(講談社現代新書1763、2004)

一応抑えておきたかったソシュール。普通は解説本よりもその人自身が書いたものを読みたいと思う方なのだが、ソシュールには言語学一般に関するまとまった主著がなく、講義録という形でしか残っていないため、とりあえず目についた新書を読んでみた。 作者の…

井上浩一『生き残った帝国ビザンティン』(講談社学術文庫1866、2008)

原本の出版は1990年。ビザンツ帝国の全体を見通すような本をこれまで読んでいなかったが、手頃な本が出たのでこれを機に(僕の知っているビザンツ通史はどれもこれも辞典並みの大きさのものしかなかったので)。 基本的には各時代を代表する皇帝の伝記的記述…

マックス・ウェーバー著、尾高邦雄訳『職業としての学問』(岩波文庫白209-5、1936初版、1980改訂)

とりあえず薄くてすぐ読めそうだったので購入、読了。 最初に当時の研究者、特に若手研究者の状況が書いてあるのだが、現代日本とそれほど変わらない悲しい状態だったようだ。 学問に対する姿勢に関する記述には反駁する点がほとんどない。きわめて近代的な…