浜田寿美男『自白の心理学』(岩波新書新赤721、2001)

読了。無実の罪でとらわれた人たちが、いかにして虚偽の自白を行うに至るかを描いた一冊。自白調書を心理学的な観点から読み込むことによって、「自白の変遷」や「無知の暴露」を手がかりに冤罪を晴らそうという試みが記されている。

こいつが犯人にちがいないとの断固たる確信のもとに取調べが進行するとき、そこには被疑者を強く有罪方向へと引き寄せる磁場が渦巻いている。それに逆らうことがどれほど困難なことか。そこでは弱い人だけが落ちるのではない。うその自白をとるのに直接的な拷問はいらない。その磁場そのものにひたすら長くとどめるだけで、まずたいていの人は自白に落ちる。それこそが、むしろ心理学的に自然な人間の姿だといったほうがよい。誰もがそうした弱さを抱えているのである。(p. 105)

裁判員制度導入の時代には必読の一冊だと思う。