小松久男『イブラヒム、日本への旅』(刀水書房、2008年)

1857年に西シベリアで生まれたトルコ系のムスリム、イブラーヒームの生涯と彼の旅を描いた一冊。汎イスラーム主義の立場から、ヨーロッパの帝国主義を批判し、「イスラームの統一」やイスラームの旗のもとでのアジアの連帯を唱え続けた人物の一代記になっています。
最近著者の先生とお会いしたこともあって手に取りましたが、このイブラーヒームがあれだけ世界中動き回って頑張って真面目に考えて、結局なにひとつ実現しなかった、というところが悲しいところでした。まあ今出ているゼミで読んでいる旅行記の著者(イラン人)が、ヨーロッパを旅行していて町に着く度に夜の街へと繰り出していくというのを読んでいることの反動かもしれません。
また、この本でも出てくるのですが、ムスリムの人々の日本人に対する評価が妙に高いのが不思議なところです。「日本人は自然にムスリム的美徳を身につけている」のような。こういう話は現在でもたまに聞いたりします(リップサービスなのかどうかわかりませんが)。