伊藤正敏『寺社勢力の中世 ―無縁・有縁・移民』(ちくま新書734、2008年)

一般的な日本の中世像に大幅な修正を迫る一冊。編纂者による編纂を経たナラティヴ史料ではなく、文書や日記というより生の史料を用いて、無縁所としての寺社の実態を描き、その様相こそが中世を中世たらしめているものであると喝破する。
語り口がやや強めなので初めはどうかと思ったが、無縁の人々のあり方が面白く紹介されていて良かった。「無縁の人々」と「有縁の人々」との間がまったく没交渉なのではなくて、有縁から無縁へ、無縁から有縁へという人や事物の動きが活発だったという点は非常に面白い。