アラン・ソーカル&ジャン・ブリクモン『「知」の欺瞞:ポストモダン思想における科学の濫用』(岩波書店、2000)

読了。読んで良かったと思える一冊でした。数学や物理学の概念がいかに「ポストモダン」思想の中で、意味のない形で使われているかを例示したもので、主に取り上げられているのは、ラカンクリステヴァ、イリガライ、ラトゥール、ボードリヤールドゥルーズ、ガダリ、ヴィリリオ。読んだことのない人も多いのですが、正直ラカンは馬鹿げていると思ってましたし、ボードリヤルはまったく理解できなかったので、ある意味とても助かりました。
また、「第一の間奏:科学哲学における認識的相対主義」では懐疑論から始まって、トーマス・クーンのパラダイム論について述べているのですが、相対主義に陥ってソリッドな実証を捨てることに対する批判が主となっています。これは相対主義やクーンの所論を完全に否定するものではないと思いますが、合理性に対する信頼というものが基礎になっているものだと感じました。この辺はバランスの問題だと僕は考えていますので、良い叩き台になりそうな議論ではあります。
余談ですが、ソーカルとブリクモンは、一応歴史学を実証に支えられたそれなりに合理的な学問だと考えてくれているようです。正直な感想は「助かる」でした。まあかなりそういうところに気を配って慎重に書いている感じでしたので、ある種のリップサービスかなとも思いますが。