マックス・ウェーバー著、尾高邦雄訳『職業としての学問』(岩波文庫白209-5、1936初版、1980改訂)

とりあえず薄くてすぐ読めそうだったので購入、読了。
最初に当時の研究者、特に若手研究者の状況が書いてあるのだが、現代日本とそれほど変わらない悲しい状態だったようだ。
学問に対する姿勢に関する記述には反駁する点がほとんどない。きわめて近代的な、まっとうな姿だと思う。特に「体験」についての見解はかなり共感できた。

とにかく、自己を滅して専心すべき仕事を、逆になにか自分の名を売るための手段のように考え、自分がどんな人間であるかを「体験」で示してやろうと思っている人、つまり、どうだ俺はただの「専門家」じゃないだろうとか、どうだ俺のいったようなことはまだだれもいわないだろうとか、そういうことばかり考えている人、こうした人々は、学問の世界では間違いなくなんら「個性」のある人ではない。こうした人々の出現はこんにち広くみられる現象であるが、しかしその結果は、かれらがいたずらに自己の名を落とすのみであって、なんら大局には関係しないのである。むしろ反対に、自己を滅しておのれの課題に専心する人こそ、かえってその仕事の価値の増大とともにその名を高める結果となるであろう。
(p. 28)

自戒を込めて。