二宮宏之「歴史の作法」『歴史を問う 4:歴史はいかに書かれるか』(岩波書店、2004)、pp. 1-57.

最近博論の序論で方法論的なことを書くために歴史学論とかテクスト論とか史料論とか、その辺のものをしょぼしょぼと読んでいるのですが、これはなかなか良かったです。とりわけ目新しいことが書かれているわけではなく、史学概論で語られるようなことではあるのですが、歴史学以外のところにも目配りが利いており、非常に良くまとまっていてかつ発展性があるように感じました。もちろんすべてが受け入れられるわけではないのですが、バランスの取れた叙述だと思います。
最近の歴史学の流れでは「実証」が「ナラティヴ(語り)」によって切り崩されることへどう対応していくか、というのが一つの論点だと思うのですが、東洋史界隈でも「実証」への「信仰」はかなり強いものがあります(少なくとも僕にはあります)。徐々にこのような関心に基づく研究は出てきていると思いますが、日本史や西洋史と比べて、パラダイムを変えてしまうような研究は、と言われると思い浮かばないのが現状ではないでしょうか。難しいところです。