文献

牧野雅彦『マックス・ウェーバー入門』(平凡社新書360、2006)

現代の人文学、あるいは社会科学の基礎となるような欧米の古典的著作についての教養があまりにも欠けていることに気づいたので、いまさらながら知識を補充中。 この本はマックス・ウェーバーの著作をその時代の研究状況と対応させて読み解こうというもの。ウ…

ハミルトン・A・R・ギブ著、井筒豊子訳『アラビア人文学』(講談社学術文庫962、1991)

「アラビア語でどんなものが著述されてきたか」を通覧するには恰好の本。ただしマムルーク朝期以降の記述は若干薄い。

片倉もとこ『アラビア・ノート』(NHKブックス356、1979)

1968-1970年の間に行われたサウジアラビア西部におけるフィールドワークをもとにした本。研究者が書いたものなので細かい点についての考える方向性がより自分の思考に合致していて、より参考になった。 最後の方に補論的に付されているアラブの世界観につい…

本多勝一『アラビア遊牧民』(朝日文庫、1984)

アラビア語詩を読む中で遊牧民の生活や世界観について知る必要を感じたのでとりあえず手近なところから。1965年の調査に基づく。著者はサウジアラビア東部のベドウィンのキャンプで二週間過ごすのだが、研究者でない日本人が抱くきわめて一般的な感情を抱い…

2008年のカイロインターナショナルブックフェア

前の公式サイトが消えていたのでちょっと情報を探していたのですが、1/23-2/2という情報が某サイトにありました。去年の日程とは微妙にずれているので多分新しい情報なんじゃないかと思いますが、よくわからん旅行会社のサイトなのでオーセンティックなもの…

オンラインペルシャ語辞書

http://www.mibosearch.com/一見なんでもない検索エンジンのように見せかけて実はロガトナーメとモイーンという重要なペルシャ語辞書のオンライン検索ができる驚愕のサイトです。ロガトナーメがオンラインで引けるというのは感動的ですらあります。 こういう…

鴨川達夫『武田信玄と勝頼−−文書にみる戦国大名の実像』(岩波新書1065、2007年)

信玄や勝頼が出した書状、証文を綿密に分析することによって、これまでの通説を修正する意欲的な研究をわかりやすく解説した本。非常に面白かったし、僕が初期イスラーム時代に関してやりたいことと方法論的にかなり近いものがあるので、参考になる部分も多…

アマゾンチャイナ

全然気付いていなかったんですが、アマゾンチャイナができていたんですね。 卓越亚马逊 http://www.amazon.cn/ もともとはjoyoというウェブ書店を2004年に買収して始めたということらしいんですが、今日アマゾンジャパンからリンクが貼ってあるのを発見する…

IFAOの定期刊行物

カイロにあるフランス東洋考古学研究所の定期刊行物の中の論文等々がpdfファイルでウェブサイト上に公開されています。 Annales islamologiques http://www.ifao.egnet.net/doc/PubEnLigne/AnIsl/ Le Bulletin de l’Institut français d’archéologie orienta…

加藤隆『新約聖書はなぜギリシア語で書かれたか』(大修館書店、1999年)

読了。タイトルとは関係ないところで新約聖書の写本校訂について書かれた部分が興味深かったです。こういう聖書学の成果が他の歴史的文献にも援用されてきたのは確かですが、現時点で未だに聖書学がこういう史料批判的な点において先頭を走り続けているのか…

加藤隆『「新約聖書」の誕生』(講談社選書メチエ163、1999年)

読了。基本的には新約聖書が成立するまでの三百年間の動きを解説したもの。あまり知らない分野なので、基礎知識の補充という意味では非常に参考になった。 中でも主の兄弟ヤコブなる人物の存在はまったく知らなかったので、興味深かった。彼はイエスの血縁で…

友野典男『行動経済学−経済は感情で動いている』(ISBN:4334033547)

読了。小田中直樹さんのブログで紹介されていたもを読んでみました。 一言でいうと心理学からの経済学批判。これまでの「経済人」を前提とした経済学では上手く説明できない事柄を、心理学的なアプローチから考えてみようという、最近の研究をわかりやすくま…

小杉泰『イスラーム帝国のジハード』(興亡の世界史06、講談社、2006年)

ちょうど出ていたんで購入して読んでいたのですが、 ウマイヤ朝を開いたムアーウィヤは、それぞれの地域に自律的な統治を認め、中央集権化は進めなかった。この時代は、通貨や税制などにしても、征服した相手の制度をそのまま踏襲していた。ビザンツ帝国の旧…

ターハー・フセイン著、池田修訳『不幸の樹』(河出書房新社、1978、ISBN:4309601812)

読了。なんというか、いわゆる「中世的エジプト」から「近代的エジプト」に移ってゆく過程とそこに生じる様々な問題を、あるひとつの家族を中心に描いた作品、でしょうか。まあそれだけではないんですけども。 どうもまったく登場人物に共感できませんでした…

塙治夫訳『ナギーブ・マフフーズ短編集』(近代文芸社、2004、ISBN:477337190)

死去の報を聞いた後、たまたま借りることができたので読んでみました。正直それほどたいして感銘は受けなかったというのが正直なところです。まあでも「頂上の人々」は結構読ませる作品でした。わりと納得できる作品というか。

劉傑、楊大慶、三谷博(編)『国境を越える歴史認識−−日中対話の試み』東京大学出版社、2006(ISBN:4130230530)−その1

とりあえず頭から読んでいます。 まず「はしがき」から。 その中で、日本の戦後世代の間に確立した重要な歴史観は「1945年の視点」とでも言えるものであった。すなわち、1945年を境目に日本には根本的な変化が生じたという見方である。終戦からの60年間、日…

ポランニーの言葉

カール・ポランニー『人間の経済1』(ISBN:4000271369)を再読しています。確か前読んだのか卒論の頃でかなり流して読んだので、ほとんど初読のような感覚です。 学者のなすべき努力は、まず第一に、われわれのもっている概念を明瞭で精確なものにし、それ…

夏目漱石「道楽と職業」

で、版権・著作権切れの文章というのがウェブ上に散在していることに気が付き、日本語のものを探してみたのですが、「青空文庫」が日本近代の作家に関してはある程度まで充実しています。で、表題の夏目漱石の講演を起こしたものを読んでみました。 彼は主に…

ウェブ上のギリシャ語文法書

一応一通りギリシャ語をやっておいたほうがいいのではないかという現実逃避に駆られ、ウェブ上をさまよっていたところ、版権切れのため自由にpdfでダウンロードできる英語のギリシャ語文法書(今ちょっと参照先が見つからないので後でまた追加します)をプリ…

Elsaid Badawi, M.G. Carter and Adrian Gully, Modern Written Arabic:A Comprehensive Grammar, Routledge, 2004.

こちらで買ったアラビア語の文法書。分厚くて高いんですが、その分内容も充実しているように思います。まだ全体に目を通したわけではありませんが、かなり使える予感がしています。これは表題の通り、基本的には現代正則アラビア語の文法書なんですが、僕が…

加藤博『アブー・スィネータ村の醜聞』(ISBN:4423460440)

19世紀半ばの裁判文書にあるある村の村長職をめぐる争いを研究していた著者が、その村を実際に訪ねてみると、その事件が現代まで記憶され村に影響を残していることが判明するという、非常にスリリングな研究です。 文書研究が現地でどのように展開していった…

宮崎市定『西アジア遊記』(中公文庫版)を読んで「イスラーム世界」研究と「東洋史」の研究について若干考えた

先頃某国からカイロへ来ていた方に「宮崎市定の西アジア遊記のエジプトについて書いているところが非常に面白い」という話を聞き、そういえばちゃんと読んだことがなかったので、借りてきてぼちぼち読んでいる。宮崎市定のキャラクターにもよるだろうが、確…

ブックフェア最終日の一日前

いやあ結構がつがつ買ってしまいました。基本史料はまあだいたいあるので、大部の本はあんまりないんですが、しょぼしょぼと買っていくと結果的に結構な量になってしまいました。 明日はどうなるかなあ。

櫻井義秀『「カルト」を問い直す−−信教の自由というリスク』(ISBN:4121502019)

読了。面白い、というか、いろいろ考えさせられる本でした。非常に難しく、語りにくい問題です。僕の立場からは、著者はバランス良くあまり偏ることなく書いていると思いました。 こちらでの生活や僕の研究における問題関心なども絡めて、いろいろ書きたいこ…

Cairo International Bookfair

毎年恒例のブックフェアですが、三回目の参戦ということで、正直あまりモチベーションが高くない状態でした。まあ他の要因も色々混ざってやる気が出ていなかったんですが、昨日参戦三日目にしてようやくテンションが以前の自分、ブックフェアが楽しくて仕方…

羽田正『イスラーム世界の創造』(東京大学出版会、2005年、ISBN:4130130439)

物凄く時代遅れなきもしますが、飛行機の中で読了。面白い本でした。 簡単に言うと、巷に氾濫している「イスラム世界」あるいは「イスラーム世界」という概念は甚だ曖昧かつ主観的なもので、定義することが困難であるとともに、実は十八世紀に「ヨーロッパ」…

鈴木公雄『銭の考古学』(吉川弘文館、2002年、ISBN:4642055401)

前々から読もうと思っていてまだ読んでいなかったものを読了。以前読んだ、三宅俊彦『中国の埋められた銭貨』と同様のアプローチ(まあこちらが先ですけども)で、主に一括出土銭の分析を通じて、日本の古代から中世、近世に至る貨幣史を再構築しようとして…

帰国時に買う本メモ

清水和裕『軍事奴隷・官僚・民衆―アッバース朝解体期のイラク社会』 羽田正『イスラーム世界の創造』