小杉泰『イスラーム帝国のジハード』(興亡の世界史06、講談社、2006年)

ちょうど出ていたんで購入して読んでいたのですが、

ウマイヤ朝を開いたムアーウィヤは、それぞれの地域に自律的な統治を認め、中央集権化は進めなかった。この時代は、通貨や税制などにしても、征服した相手の制度をそのまま踏襲していた。ビザンツ帝国の旧領土ではディルハム銀貨が、ササン朝ペルシアの旧領土ではディーナール金貨がそのまま使われていたのである。
(p.192)

・・・萎えました。続きを読む気が一気に失せました。
単純にビザンツ帝国→ディーナール金貨、サーサーン朝→ディルハム銀貨というのを逆に書いてしまっただけなんですけれど、これってイスラーム史においては常識の範疇だと思っていたんですが・・・。僕の専門領域だから過剰にそう思うだけなのかもしれませんが、ちょっとこれは僕の中では完全にアウトです。
この本は歴史学というディシプリンを中心的な学問領域としない研究者が書いた歴史の概説書として、いろいろ論点となるような部分があるのですが、ちょっとそれを考えて書く気力が出てきません。
あと、本当に細かいことをいうなら、ディルハム、ディーナールという言い方はアラビア語なまりなので、ビザンツ帝国、サーサーン朝の貨幣を指すのであれば、デナリウス、ドラフム(ドラクマ)と言った方が正確だと思います。まあ単純に金貨、銀貨で良いと思いますけども。