ポランニーの言葉

カール・ポランニー『人間の経済1』(ISBN:4000271369)を再読しています。確か前読んだのか卒論の頃でかなり流して読んだので、ほとんど初読のような感覚です。

学者のなすべき努力は、まず第一に、われわれのもっている概念を明瞭で精確なものにし、それによってわれわれが、人間活動の行われる状況の現実的な姿を可能なかぎり忠実に示すのに適した言葉で、人間の暮らしの諸問題を定式化できるようにすることである。そして第二に、人間社会において移り変わってゆく経済の位置と、過去の文明がその大規模な変遷を巧みに処理してきた方法とを研究することをとおして原理と政策の範囲をわれわれの意のままに拡大するようにすることである。
それゆえ、理論的課題は、人間の暮らしを研究する学問を広大な制度論的かつ歴史学的基礎の上に確立することである。用いられるべき方法は、思考と経験の相互依存によって与えられる。データによらないで構築された用語や定義は空虚である。他方、われわれのパースペクティヴによって再調整を受けていない事実の単なる寄せ集めは不毛である。この悪循環を断ち切るには、概念的探求と経験的探求とがあい携えておし進められなくてはなるまい。この探求の道すじにはいかなる近道も存在しないという認識が、われわれの努力を支えてくれるであろう。(「著者序文」p.29より)

経済史家でなくても、そのいわんとするところはほぼそのまま受け入れられる言葉です。こういう真っ当な言葉を忘れないでいたいと思っています。