学問と(心理的)厳密性

ここで、こうした新しいヨーロッパというものが、多くの誤謬から形成されたことを注意しておこう。十九世紀以降の専門体制下の科学者は、「真実」を語ることを強制されている。十七世紀の数学者たちは、むしろ多くの誤りを述べていた。
おそらく創造のためには、「真実」を語ることが、それほど有効ではないだろう。まだ「真実」が保証されないような、あやふやなことを論じあう中で、たとえその九割が虚偽だとして投げ捨てられようとも、残りの一割の中から<真理>が姿を現してきたものである。少なくとも十七世紀はそういう時代であった。
(中略)
じつはぼくは、現代でももう少し科学者たちに誤謬が解放されているほうが、創造のためにはよいと考えている。十割の真実ばかりが語られるよりは、九割とまではいわなくとも、五割程度の虚偽を伴った言論のほうが、創造を刺激するのではないか、と考えている。
森毅『魔術から数学へ』(講談社学術文庫996、1991年)、p. 213)

最近自分の中で「適当なことを書くモード」が高まってきたところに、タイムリーな言葉。

ぐっと矮小な例で言うと、京都大学には人文研究所というホラフキ文化人のたまりがあって、戦後文化に刺激を与えてきた。人文研の現在の人の説によると、その昔の制度のととのわないころは、大部屋に寄り集まって、年じゅうなにやらわからん議論をしておったのが、活気のもとだったそうだ。それが当今では、研究室が整備して、みんなが研究に専念しはじめて、かつてのホラフキの栄光はないのだそうな。
(同書、p. 214)

のだそうです。

帰国

エジプトより帰国してしまいました。今成田にいますが、今日のうちに札幌に戻る予定です。いろいろ書きたいことはありますが、順調なら来週ドイツに発つので、いろいろ処理しなければならず時間が取れないかもしれません。とりあえず生存報告ということで。
ちなみにエジプトはまだインターネットはほぼ使えない状況です。少数の非政府系の小さなプロバイダーのネットはつながるという話は聞きました。新聞社は衛星回線を使っていました。

カイロ滞在四日目

昨日結構遅くまで起きていて、タハリールのデモがどうなっているのか、ある程度情報を得てから寝たので、かなり寝不足。でも七時半には起きて、九時に文書館へ。昼にいったん帰って、午後から場所の移った国立図書館の写本室に行き、それなりに日々をこなす。
(ちなみに二日目はアレクサンドリア図書館に日帰りでマイクロを見て、三日目はポリスデーで休日だったので仕事は特にしませんでした。)
今日もデモは予定されているようで、多分一番大きいのはナスルシティのではないかと思うのですが、もちろん正確な情報はありません。図書館からの帰りには弁護士(ジャーナリスト?)協会みたいな建物に、人がたくさん集まって声を上げているのを見ました。デモの一つでしょう。
ただ、町はきわめて平常運転でありまして、普通の暮らしが営まれており、騒然とした雰囲気というのはほとんど見られませんでした。タハリール広場も通りましたが、警察が多いくらいで、なにごともなかったようないつものタハリールでした。
明日はまたアレキサンドリアにまた予定なのですが、情勢がどうなるかわからないところがあるので、ちょっと迷っています。
あと関係ないですけどさっそく腹を壊しました。昨日食べた汚い中華の麺だろうかと思いますが、カイロでも中国人がどんどん増えてきているようです。

<追記1>
今もTwitterにつながりません。やっぱりブログと比べてTwitterの拡散力というのは凄いなというのが使えないときによくわかります。独裁国家Twitterを禁止する理由がよくわかります。

カイロにおりますが

現在文献調査のためエジプトのカイロにいますが、チュニジアのあおりもあって、休日の今日、デモがかなり激しく行われている模様。今宿泊している場所は静かなものですが、そこから1kmくらいのところでは夜中まで多くの人が集まっているようです。
http://www.bbc.co.uk/news/world-africa-12272836
あたりを見ると、今日帰ってきてからTwitterにつながらないのも政府が遮断しているかららしく、ご多分に漏れずfacebooktwitterがデモ側に利用されていたようです。
今のところ革命になる気配はないと思いますが、今後の状況次第ではいろいろ起こるかもしれません。エジプトは人口も多いし、数万人程度が動いたくらいではどうにもならないと思いますが、こういうのはなってみないとわからないところがあるので、何とも言いがたいところです。
明日、平日になってもデモが続くようであればなにか情勢に変化があるかもしれませんが、多分そこまで大事にならないだろうというのが大方の見方のようです。

<追記>
イスラム系組織によるliveupdate> http://www.ikhwanweb.com/breakingNews.php
警察が実力行使でデモを追い散らそうとしている模様です(こちらの午前一時)。

<追記2>
静かですが時折サイレンの音が聞こえます。
Twitterにつながらないのがもどかしい。

<追記3>
現在デモの人々はタフリールからラムセスへ場所を変えるとの情報が。ネットで追っている限りの情報で言うならば、二年前のイランでのデモの流れに近いものを感じる。
まあしかしすぐ近くにいてネットで情報を追っているっていうのもアレですが。
ただ催涙弾がぶっ放されている(らしい)ところに行くのはさすがにねえ。

<追記4>
ここは静かなもので、ここから見る町は普段とそれほど変わらない。普通に車も走っている。(午前二時)

<追記5>
デモの人々は徐々に追われつつある模様。追記3で書いた「イランと似ている」というのは結局鎮圧されてしまいそうだということ。

WikiLeaks創始者のインタビュー記事

An Interview With WikiLeaks’ Julian Assange-Forbes
http://blogs.forbes.com/andygreenberg/2010/11/29/an-interview-with-wikileaks-julian-assange/

面白かった。
結局、WikiLeaksがやっていることは昔マスメディアがやっていた役割を、拡大して先鋭にしたものだという印象。テクノロジーの発達に伴って、より多くの情報が明らかにされるという。
WikiLeaksも生き残れば権力化は避けられないだろうけども、そうやって段階を踏みながら情報はどんどん増えていくのだと思う。ただ、そういう流れに人間の精神がどれだけついていけるかというのは、疑問ではある。Assangeの言う清く正しい世の中に向かうとして、それがどの程度のスピードなのか。
まあそんな大げさのことにならない可能性ももちろん十分にあるが、その方向へ向かう可能性の方が大きいと思う。
ともあれ今後の生き方について色々考えさせられる記事だった、という思考の断片を残してく。

古墓関連逸話試訳2

陳金は若くして軍人となり、江西節度使劉信に従って、處州を包囲していた。彼は密かに仲間五人とある大きな墓を発掘したが、棺桶を開けてみると、白い髭の老人で、その顔は生きているごとく、全身白い着物を身につけ、それもすべて新品のようであった。
棺桶を開けると白い気が天へと立ち上って、墓の中には香しい匂いが残った。陳金が一人で棺桶の蓋を見ると、粉のようなものがあり、かすかに硫黄の匂いがした。陳金は以前棺桶の中の硫黄は薬であって、仙人になれると聞いていたので、服の懐にそれを掬いとって、持って帰った。墓の中には他に珍しい宝もなかったので、皆で墓を埋めて出た。(これでまだ半分くらい。残りは明日)

(宋・徐鉉『稽神録』巻五「陳金」)

オンラインでアラビア語写本を見ることができるサイト

デジタルイメージコレクション

Princeton Digital Library of Islamic Manuscripts
http://library.princeton.edu/projects/islamic/index.html

Islamic manuscripts at the Leipzig University Library
http://www.islamic-manuscripts.net/content/below/index.xml

Open Collections Program: Islamic Heritage Project, Manuscripts (Harvard)
http://ocp.hul.harvard.edu/ihp/manuscripts.html

Masterpieces of the non-Western book (Oxford)
http://www.odl.ox.ac.uk/digitalimagelibrary/oriental_home.html

Medieval Islamic Views of the Cosmos (Oxford)
http://cosmos.bodley.ox.ac.uk/hms/home.php

The Virtual Manuscript Room (Birmingham)
http://www.vmr.bham.ac.uk/

関連リンク集

Islamic Manuscripts online resources and collections
http://www.mcgill.ca/library/library-findinfo/subjects/humanities/islamic/manuscripts/

Digital resources for Islamic Studies : JISC
http://www.jisc.ac.uk/publications/programmerelated/2010/digitalislamicstudies.aspx

Intute - Islamic manuscripts
http://www.intute.ac.uk/cgi-bin/browse.pl?id=888895

時々追補していきたいと思っています。

古墓関連逸話試訳1

熊博は、もとは建安の渡し場の役人だった。岸が崩れて一つの古い墓が見つかった。藤蔓が棺にからみついていた。そばには石があり、そこには以下のように刻まれていた。
「陥ちそうで陥ちないのは藤に縛られているから
 落ちそうで落ちないのは砂に止められているから
 五百年後、熊博に遇う」
熊博が平光寺に使いを送ると、僧はお金を募り、これを葬った。熊博は後に建州刺史にまで出世した。
(宋・徐鉉『稽神録』巻一「熊博」)

あまり調べず適当訳。詩の部分はかなり怪しい。原文は「欲陷不陷被藤縛、欲落不落被沙閣、五百年後遇熊博」。「被沙閣」はなんだろうなあ。
いろいろ教えていただけると助かります。

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<追記:コメントいただいて問題の部分を修正しました。>

歴史ニュースポータル

作ってみました。

歴史ニュースポータル
http://www17.atpages.jp/~santairiku/RNP/

あまり時間をかけすぎずに続けていければいいなと思っています。目標は一日更新作業時間15分。

<追記>現在UTF-8が完全に文字化けするようになってしまい、更新も滞っています。借りてる無料サーバのメンテナンスと同時に問題が起こったので、おそらくこちら側の問題ではないと思うのですが。時間ができたら移転先を探して移転しようと思っています。

曹操の墓が発見されたとのこと

曹操の陵墓発見 中国河南省、遺骨も出土 - MSN産経ニュース
曹操高陵在河南得到考古确认 - 河南文物網(中国語、出土物の写真多数)
河南“曹操墓”被发现. - 视频 - 优酷视频 - 在线观看 - 河南 “曹操墓” 被发现. 辽宁电视台 辽宁卫视 说天下 091227(ニュース動画、中国語)

曹操の墓が見つかるなんて思いもしてなかったなあ。世の中はいろいろある。