終末は続くよどこまでも

最近映画の宣伝絡みでよく耳にする「2012年人類滅亡説」ですが、人類がここ数千年、ことあるごとにこの世の終わりが近いと考えてきたことは確かです。
以下、ナショナル・ジオグラフィックのサイトの記事を(一つ一つの記事は簡単な紹介です)。

終末予言の歴史:古代ローマ(記事全文) - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト
終末予言の歴史:ハレー彗星(記事全文) - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト
終末予言の歴史:ブラックホール(記事全文) - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト
終末予言の歴史:ロンドン大火(記事全文) - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト
終末予言の歴史:惑星直列(記事全文) - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト
終末予言の歴史:ヘールボップ彗星(記事全文) - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト
終末予言の歴史:天体の“合”(記事全文) - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト

自分の研究としての「初期イスラーム時代における終末論」というのはかなり奥深いテーマで、関連本を読んだりもしているのですが、このような「終末論」が中世、現代問わず、実際の社会にどの程度の影響を与えうるか、という点には興味があります。
また、最近見つけてこんな本も買ってみました。

Apocalypse How: Making the End Times the Best of Times

Apocalypse How: Making the End Times the Best of Times

いわゆる聖書的な終末の世界でいかに楽しくサバイバルするかというジョーク本です。ぜひ誰かに訳してほしいのですが、聖書的世界観が前提知識としてないと面白くないので、日本では売れなさそうかなとも思います。
ちなみに題名の"Apocalypse How"は映画"Apocalypse Now"(=邦題『地獄の黙示録』)のパロディでしょう。

DAWN.COM | World | Afghans burn Obama effigy, accuse US troops of sacrilege

KABUL: Furious Afghans torched an effigy of US President Barack Obama and hurled stones at police on Sunday during a mass protest over allegations that western troops set fire to a copy of the holy Quran.
A crowd of around 1,000 demonstrators, mainly university students, marched through the streets of Kabul before massing in front of the national parliament building and hurling stones at riot police as well as an armoured vehicle which blocked them from going down one street.

アフガニスタンオバマの肖像を焼き払う抗議行動が行われた模様。アフガニスタンに来ている西洋の軍隊が、タリバン掃討作戦中にクルアーンを焼いたという噂が流れ、それへの抗議行動が今回の事件につながったという話です(リンク先には実際に焼いていると思しき場面の画像があります)。
また、一方で、
カルザイ大統領、パートナーとしての米国の信頼性に疑問 写真2枚 国際ニュース : AFPBB News

【10月26日 AFP】アフガニスタンのハミド・カルザイ(Hamid Karzai)大統領は25日、米CNNテレビのインタビューで、パートナーとしての米国の信頼性に疑問を呈した。また、大統領選などで不正が次々に明らかになったことについて、自らの政権の正当性に対する批判を一蹴した。
 カルザイ大統領は、「米国はアフガニスタンの信頼できるパートナーだろうか。西欧諸国はどうだろうか」「われわれは与えられると約束されてきたものを受け取ってきただろうか。パートナーとして扱われてきたのだろうか」と述べた。
(中略)
 カルザイ大統領の発言は、これまで同大統領が繰り返してきた米軍の空爆で民間人の死者が出たことへの批判だけでなく、バラク・オバマBarack Obama米大統領アフガニスタン戦略の見直しや増派問題で依然として態度を明らかにしていないことについて批判する意図があったものと受け取られている。
 一方、カルザイ大統領の対立候補であるアブドラ・アブドラ(Abdullah Abdullah)元外相もCNNのインタビューに応じ、アフガニスタン情勢が悪化しているのはカルザイ大統領の責任だとし、アフガニスタン政府に信頼に足るパートナーがいなければ、米国のアフガニスタン政策は成功しないだろうと警告した。
 アブドラ元外相は、情勢安定化のためには増派は必要だと考えを示す一方で、戦闘開始からすでに8年が経っている現在、本来ならばアフガニスタンは増派ではなく、駐留軍の削減を求める立場にいるはずだったと指摘。「現実にはそうなってはいない。なぜか。それは現在の政府による失敗が原因だ」と語った上で、「米国のアフガニスタン政策の成功は、アフガニスタン政府の信頼性や正当性にかかっている」と強調した。

というニュースも出ており、アフガニスタン問題についてのオバマの立場は苦しくなるばかり、という様相です。

人文系新刊書紹介サイト

人文書(専門書の新刊書のご案内)

もしかしたら超有名サイトなのかもしれないのですが、まったく知らなかったのでご紹介。人文系の新刊をかなり詳しく紹介しているサイトです。新刊紹介はジャンル分けされていてみやすいですし、朝日・読売・日経の書評にどの本が取り上げられたかも一覧できたりします。
これでまた、買いたい/買わなければならない本のリストだけが、どんどん膨大なものとなっていくことでしょう。

五十嵐修『地上の夢 キリスト教帝国:カール大帝の<ヨーロッパ>』(講談社選書メチエ224、2001)

少し前にフランク帝国を研究している人にあったこともあり、自分の研究している時代と比較的近いということに気付いて読んでみました。
カール大帝が多くの場面でキリスト教的な意義付けによって行動していたと描かれているんですが、あまりそういうイメージがなかったので吃驚しました。ただし、基づく史料を書いたのが教会関係者だからそういう風に描かれているという可能性はなくはないように思います。
ただいずれにせよこのあたりの時代が、一神教帝国分立の時代と言えるのは確かでしょう。

小島道裕『信長とは何か』(講談社選書メチエ356、2006年)

明治以降の日本の軍部は、数において劣る信長が勝った桶狭間の合戦を、小国日本が列強と対決する際の都合のよい史実として重視した。そして「迂回・奇襲」という、事実ではない創作された作戦と「勝因」を教訓として活用し、同様の作戦を安易に立案し、かえって戦術の基本をおろそかにして、悲惨の結果を招いたという。
(pp. 32-33)

桶狭間の合戦の神話化、のような話。計算された奇襲だったというのは江戸時代の歴史小説的伝記である『甫庵信長記』によるものとのこと。自分の専門以外の分野は全然フォローできてないなあと痛感する昨今です。
ちなみに「桶狭間」は谷間の土地ではなくて、「おけはざま山」と記されていて、今川義元は高所に陣取っていたようです。信長の勝利はかなりの部分偶然によるものだったとか。

井野瀬久美恵『大英帝国という経験』(講談社、興亡の世界史16、2007年)

それゆえに、アメリカ喪失の経験は、帝国という空間統治についていくつかの教訓を残すことになった。第一に、「イギリス人」としての共感を植民地に求めないこと。第二に、ウェストミンスタ議会を核とする枠組みに植民地を組み込むことは賢明ではないということ。そして、第三に、アメリカ喪失は、本国が植民地を抑圧した結果ではなく、むしろその逆、植民地に勝手な統治を許してきた「有益なる怠慢」の顛末だったこと。この三つ目の教訓から、イギリスは、アメリカ独立を承認したパリ条約締結の翌一七八四年にはインド統治法、九一年にはカナダ統治法を、そして一八〇〇年にはアイルランド合同法を成立させて、帝国への介入姿勢を示したのである。
イギリス議会の権限を拡大させず、植民地に直接課税を求めず、しかもしっかり介入する――そのためにイギリスが編み出した統治方法が、できるかぎり領域支配を抑える非公式の支配、すなわち「自由貿易の帝国」であり、それは、資本投下や技術移転などをつうじて南米や中国などで実行されることになる。そしてもうひとつが、アジアやアフリカで展開される、現地社会にできるかぎり手をつけない間接統治だ。いうなれば、アメリカ喪失の経験は、帝国の中心が周縁を支配するには限界があることを教えたのだった。
(p. 56)

大英帝国の変質のメルクマールとしてのアメリカ喪失」という理解。拡大が必然的に変質を伴うと考えるといろいろ考えが広がる。

ジェフリー・パーカー『長篠合戦の世界史―ヨーロッパ軍事革命の衝撃1500~1800年』(同文舘出版、1995年、原著は1988年)

読了。近世ヨーロッパにおいて軍事技術がどのような道をたどって革新されたか、ひいては近代に他地域を圧倒することになった軍事力の背景がどのようにして形成されたかを描いた一冊。この方面にはやや疎いこともあり、かなり新鮮に読めた。
なによりも、銃や砲だけではなくて、それに対する築城技術の進歩が、ヨーロッパのアジアにおける軍事的優位を支えていたというのが興味深かった点。また近世のヨーロッパ人のアジアでの存在は、実質的にはモンゴル人やムガル人と寸分たがわぬ遊牧民戦士集団にほかならなかったというのは非常に腑に落ちるところ。
原著の年代を考えると現在までにたくさん修正される点はあると思うが、それでもまだ一読の価値があると感じた。
しかし、邦題はあまりにも内容とかけ離れていていただけない。ちなみに原題はThe Military Revolution: Military Innovation and the rise of the West, 1500-1800。売りたい気持ちが前に出過ぎている。

ロイ・ポーター著、見市雅俊訳『啓蒙主義』(岩波書店、ヨーロッパ史入門、2004)

原著は2001年。"Enlightment"(=啓蒙)と呼ばれる営為を担ったPhilosophesと自称する人々についての研究を整理し、紹介したもの。
第七章における「運動か、それとも心性か」という問いの立て方には考えさせられた。筆者が最近考えている初期イスラーム時代における伝承主義と理性主義の相克のあたりの話についても、この問いは重要な問いとなるように思う。

ウィリアム・ドイル著、福井憲彦訳『アンシャン・レジーム』(岩波書店、ヨーロッパ史入門、2004)

原著は2001年。フランス革命の前段階に存在したとされる「旧体制」がいかなるものであったか、いかなるものとして考えられてきたか、ということに関する研究をまとめてわかりやすく整理したもの。
同じ対象が、それぞれの時代背景、思想背景、研究視角などによっていかに相反する像を持つものとして描かれてきたかの実例が示されていて勉強になる。